たまゆらの農作業に合わせた野良着制作

草木染めと活躍する和裁の道具達

野良着とは言うもののそもそも野良着とは?と思い返してみます。

仕事に適した作業着でしょうか

たまゆらの野良着の始まりはというと、

苧麻という素材の持つ風合いや着心地に魅了され、手元にある苧麻の織り上げた反物をいかに仕立てるかがそもそもの始まりです。

いざ!とハサミを持ってみても勇気はでません。

成り成りていく形が定まらないのです。

自分の手に、心に、思いに力がないと知らしめられる瞬間です。

さて、今回淡路島で生活を初めてみたら農業に首ったけです。農業女子なる言葉もでき、農業に前向きな女子が増える昨今、野良着も普段着も街着も部屋着も日々を彩る楽しみの一つです。

農作業にはいろんな動作があるのでとにかく肉体の可動域を狭くするような

ことにならないように動きやすさ、外傷、防虫などこちらの狙いは様々です。

仕事着、働き着、労働着、野良着などと呼ばれる伝統的な和服は二部式が多く

仕事の内容に適するように独自の着方があり、一見してその職業を知ることが出来た。とコトバンク 日本大百科全書には書かれています。

作業性もあり、通気性もあり、芯をささえてくれる形。

一番大切なのは心弾む事。でしょうか。

野良着と一言で言っても畑には様々な作業があります。

草刈り作業、刈った草が乾燥したらレーキでひたすら集めて畝に敷いていく。

これまたずっと立ち作業。草刈機は重いし、レーキで草集めも長時間になると腰に

くる。鎌で土を削って種下ろしの作業も、ワイルドな草たちに全滅させられないようにする草刈り、敷き藁マルチも繰り返された一定の動きを長時間することは

どんな仕事でもどこか体に負担をかけます。首、腰、手首、背中と、作業の数だけ

あります。そしてどの季節でも何を着用しても農作業は汗だらけになります。

なので適当な衣服ではなく作業に合わせて着ていくのは今も昔も変わらないようです。私がたまゆら自然栽培園の畑に出る時は身体の芯を感じながら腰や姿勢を保つ為、帯をしめて畑に向かいます。

活躍和裁小物①指ぬき。

3種類ありますが緑のプラスチックが付いている状態で売っています。三個で数百円くらいでしょうか。七つ道具入りさせるためには少し改造させます。京都の和裁教室の方達はしていませんでしたが和裁歴40年のいつか舞妓さんの着物を縫い上げたいと現役で和裁を楽しみ日々丁寧にご指導下さったご近所和裁先生から教わった指抜き改造技術は至って簡単でした。まずは皮を繋いでいる糸を切りプラスチックを外します。そして皮を裏返しにして自分の指のサイズに縫う。これだけで針と布と手が一体化します。一体化するように日々練習ですが。

真ん中のが中指にはめる運針用。左の小さいのが薬指にはめる帯縫い用。

●たまゆらの野良着 着物リメイク編

着物を着たいが大前提のお話です。

最近男性の着物を着る機会がありました。身八つ口がないだけで着る時も、着崩れを直す時も通気性もここまで違和感が。。布力はまだまだあるけどそれなりによく着込まれ大事にされていたであろう能登上布です。最近までは単衣の久留米絣で畑に出ていましたがここ淡路島五色地区は夏雨が降りません。洲本は降っても五色は雨雲が通らないのです。ジメジメはするけど酷暑が続きます。なのでこの男子着物能登上布を思い切って野良着にしてみました。大切なのは作業性、通気性、防虫性(これは微妙か)気候にあった布選び、

そして景色の一部となり自然との調和を探すための自分のための1着。このシャリ感畑で気分が上がっていきます。(注、鋸持って竹藪入って伐採!などハードな作業には向いていません。)

まずは身八つ口を広めに作りたいので解いていきます。先人の縫い目を覗ける一コマから始まります。リッパーや目打ちを使って丁寧に。

少し多めに開いて、筒袖にする為袖の袂も解いていきます。やり過ぎず潔く進めていきます。

肩線から計り筒袖の長さを決め裁断して袖下を三つ折りぐけします。布によってはミシンを使用する場合もあります。脇線の解いた所も縫い直します。

お次は丈直しです。作業的防虫的には膝上5〜10センチが望ましいです。

丈が短いとどこからか虫が体内に忍び込んできたりします。

そしてお端折りを作るか作らないか考えます。二部式や作務衣などは羽織ったり脱いだり様々な場所での体温調節が可能です。それも好きです。今回は能登上布ということもあってなるべく着物の形としても現存させたい、お端折りしたい、本気野良作業、農作業にいく時は丈も裁断しますがとりあえず重労働向けではなく、軽めの毎日野良着にしてみました。着物や、布の状態と作業に合わせてつくっています。

袖処理のみで完成です。

近江上布おうみじょうふ、越後上布えちごじょうふ、能登上布など、麻とはいうものの高級品の最さいたるものもある中、普段着とはいえぬこの着物も使い古しよそ行きにならぬなら普段着て楽しみたいものです。

野良着にするときの裾は裁断した場合塵や土が入らないように縫い目、糸調子を合わせながらミシンで処理します。ミシンで処理できない布力の着物は野良着にはなりません。

大切なのは習うより慣れろです。手を動かし、日々続けるのです。お百姓さん、自給自足、農作業、着物女子、草木染め、野良着物、野良着作り、針仕事、綿花栽培、全てを形にしていくために。

出来上がりはこちら。

●たまゆらの野良着 ガーデニング洋服編

晒し布10メートルのうち6メートル強を使います。糊を落とし地直しします。

今回の服は縦に繋ぐのでわなく上部、中部、下部の前身と後身の6パーツに分けて

裁断、糸はインターネットの糸屋さん ボビンの綿100% キンカギカタン50番後染め用を使いました。

相棒のJUKIで直線ぬいです。

そして呉汁を用意します。我が家の畑で収穫した痛み大豆が残ってる場合はその大豆で呉汁を作ります。漬け込み、乾かしている間に庭の枇杷の葉を採取してきます。

食用と染めように選別しながら洗い、産毛を取り除き、適度な大きさにカットします。

今回は生葉を使用。私の染め方ですと乾燥した葉より生葉の方が枇杷は深い色味が出るようです。下記に出てくる帯を灰汁媒染で濃いめの色を狙っていくのでこちらの野良上着は洗濯頻度も高そうなので、色素定着をしっかりさせたく思い、ミョウバン媒染でサーモンピンクを狙っていきます。

枇杷の葉を一時間ほどコトコト煮出していくと色がどんどん出てきます。

綺麗な晒し布で濾して汚れなどが入らないようにしてからもう一度同量の水を

入れて一時間ほど煮出します。

作業を言語化していると草木染めは手をかけますが目を離す時間があるのでながら作業も多く、合間に枇杷茶を楽しんだり点在しているやりかけの手仕事を楽しむ事ができます。去年採取した綿花の残った綿繰りとカーディングなど楽しみはそこかしこにあります。

染液が完成する頃呉汁に漬け込んで乾いた野良着の下部に絞り柄を作るため布の端きれを使って縛っていきます。

そして大鍋に投入。です。

布が痛まぬよう弱火でコトコト、染液→ミョウバン→染液→ミョウバン色落ちを見越して少し濃いめに染めたらじゃぶじゃぶ洗って干して完成です。

あとは着心地。

今回は横繋ぎで作ったので作業性がどうなのか検証してみます。

●たまゆら野良着の帯について

野良作業には半幅帯着用が好ましいです。(ガーデニングや作業内容によって薄手の長袖着用の場合は帯はしません。化繊の半幅は頑丈だし汚れてもゴシゴシ洗えるけど通気性がイマイチにて化繊は真冬に使うか使わないの頻度です。)

綿の帯は適度に柔らかくしなやかに、体を支えてくれますが一般的に売っている

半幅帯だとやはり暑いし部屋ぎに使うのがよろしいです。

京都西陣で帯の手縫いの内職をしている時に様々な帯を扱わせて頂きましたが、半幅帯の作成は手間はかかりますが至って簡単です。

長さ3メートルから4メートルの布の上端と下端を中表に縫い、片面に帯芯というものを縫い付けていきます。縫い付け方も様々ではありますが、基本は糸に遊びを持たせる事でした。上端も下端もいろんな方向に引っ張る際に柄や布地が引きつれない為に緩く縫っていきます。帯芯と布が1センチから1、5センチは移動します。そして現場でぬいあわさった帯を2人がかりで掛け声かけながら勢いつけてひっくり返していました。。。そして仕上げにアイロンです。数千円の帯も数百万円の帯も作り方は一緒です。素材が違うだけです。

西陣の帯作りの話はまたいずれ。

さて、

サクッと畑に足を運ぶ為着替えは簡単が好ましいです。帯板をつけてシワを伸ばし体に巻きつける必要が畑の農作業にはありません。。クルクルっと巻いて完了できる簡単な帯が望ましく、身体の芯を支えて欲しいのです。細過ぎても柔らか過ぎても要は足せません。

活躍和裁小物②くけ台とかけはり、和裁用くけ針

くけ台はクランプというホームセンターで売ってるもので代用。大きなアルミのクリップでも代用可ですが机の板の幅や場所移動も考えて、クランプを採用。糸は専用の長いくけ針で布に適度な張りを持たせながら進みます。洋裁用の針とおき比べてみました。慣れるとくけるのは楽しい針遊びです。

腰帯があると体の芯を感じていると膝を使うようになります。呼吸にも意識を向ける事が可能になります。夢中になり過ぎて息を詰め、胸が狭くなり背中が丸まってくるのはデスクワークも農作業も一緒です。大切なのはいつも我がうちに外側からの自分を感じることのように思います。

たまゆらの農作業用の帯、上記野良着上着で使った晒し布の残りの4メートル弱を使います。糊を取るためにぬるま湯で洗った晒しを呉汁に一時間ほどつけておきます。シワにならぬように優しく押しながら呉汁を抜いて淡路の空と風にさらして乾かします。

染料用に育てているダイヤーズカモミールの淡い黄色、カレー用染料用ウコン、玉ねぎ、毎日のむチャイのアッサムティからコーヒー、よもぎと自然界には染めることのできる植物がいっぱい。

今回は家の裏に生えている枇杷の葉で半幅帯を作り開始です。枇杷は色味が綺麗ですが染めムラが出やすい染料だと思っているのであえて、絞ったり、割り箸使って幾何学模様使ったりなどはせず、染めムラを楽しむ事にしました。

葉はお茶用と、染料用に選別しながら数日乾燥させます。(乾燥させたものと生葉では色味が変わって来ます。このお話もまた次回。)コトコと煮込んで濃く出すために二日間かけて染液→灰汁媒染液を繰り返しました。ミョウバンだと黄味がかったサーモンピンクになりましたが灰汁を媒染液にしたものはマットな桃色が出ました。

野良着女子の好きそうであって欲しい、女の子スパイスの効いたたまらん色味が出せました。

帯芯を15センチ幅に切って晒しを包んでくけて作ります。適度に張りも持たせたい。軽く薄くしなやかに。。。

さあくけてくけて完成。

ガシガシ使用の半幅。

晒し10メートルで野良着と半幅帯が出来上がりました。

たまゆらは様々な着物を仕入れています。その着物を街着にするか普段着にするか野良着にするか試行錯誤してそしてもう一度日常に着物のある風景を愉しみたいと思っています。

日本の文化を楽しみながら形に捉われず自由に着ていきたいものです。

          たまゆら 玲子

下記は野良着に関するものを抜粋しておきました。

コトバンク 日本大百科全書

野良着

田畑で農耕作業をするとき着用する仕事着。広義には農山漁村で用いる労働着をさし、帯、前掛け、手甲(てっこう)、脚絆(きゃはん)、襷(たすき)、被(かぶ)り物(もの)、雨具などの付属品をも含めていうこともある。働き着として機能性が優先され、着やすく、活動的である。また外傷からの保護や防虫を目的とし、仕立ても簡略な形となっている。

仕事着   

作業時における不測の災害を防ぎ,寒暑,風雨,塵埃(じんあい)などから体を保護し,また活動を容易にして作業能率を高めるなどのために用いる。日本在来の仕事着は働き着,労働着,野良着(のらぎ)などと呼ばれ伝統的な和服式であった。形も上衣と下衣に分かれた二部式が多く,それぞれの仕事の内容に適するよう独特の着方があり,一見してその職業を知ることができた。…